INTERVIEW

ホワイトピーク蒸留所の創設者インタビュー

2025年4月25日、イングリッシュウイスキー・ワイヤーワークスの製造元、ホワイトピーク蒸留所の創設者、マックス・ヴォーンが来日。ウイスキーづくりをはじめた背景からワイヤーワークスの日本発売についてインタビューを行いました。

Q:ホワイトピーク蒸留所を設立した背景とは?

マックス氏: 私はもともと金融関係の仕事をしていたのですが、ウイスキーが好きで、休日には妻と各地の蒸留所巡りを楽しんでいました。そうした中で芽生えたのが「自分たちの蒸留所を持ちたい」という夢でした。

ホワイトピーク蒸留所は2016年にスタートしたのですが、その頃イギリスではイングランド産ウイスキーが流行の兆しをみせており、イングリッシュウイスキーという新しいカテゴリーに可能性を感じました。

とはいえ、ウイスキーは最低でも3〜5年の熟成期間が必要。そこで、最初はジンとラムづくりからスタートさせ、2022年2月にホワイトピーク蒸留所初のウイスキー「ワイヤーワークス」を発売することができました。

Q:イングリッシュウイスキーが英国で注目された理由とは?

マックス氏:蒸留所を立ち上げる少し前くらいから、イギリスでもオーガニックやサスティナブルといった考え方に注目が集まるようになりました。原料や製法、地産地消といった考え方が取り入れられているイングリッシュウイスキーも、その潮流に乗って知名度をあげていったように思います。

イングリッシュウイスキーの魅力は、「伝統を大切にしながら新しい製法や味わいを追求する」というモダンなアプローチにあります。

私たちの具体的な取り組みとしては、スコットランドでは大麦の発酵期間は2〜3日程度ですが、私たちの場合は7日間に延長するなど、ひとつひとつの工程を見直し、緻密なアプローチで製造を行っています。あとは、ワイヤーワークスのアイデンティティにもなっているSTR樽熟成でしょうか。KAVALANで有名なSTR樽の考案者ジムスワン博士に教えてもらいながら取り入れました。

Q:ホワイトピーク蒸留所の今後の目標は?

マックス氏: ホワイトピーク蒸留所は決して大きな蒸留所ではなく、まだ新興蒸留所。グレンモーレンジィや、グレンフィディックなど日本でも多く流通している蒸留所ではないので生産量も限られます。その分、手間暇を惜しまずイングランドウイスキーの発展に繋がるような本当に美味しいウイスキーを作っていきたいですね。目指すのは、本当の意味でのクラフトウイスキーです。

僕が最も尊敬しているのは、スプリングバンク蒸留所。スプリングバンクは、人気になった今でも素晴らしいウイスキーを作り続けています。ワイヤーワークスも、スプリングバンクのスタイルは意識していて、ライトピーテットスタイルは、スプリングバンクのピートレベルをイメージしています。今後も強いピートよりも他の良さを引き立てるような、程よいウイスキーづくりを作っていきたいですね。

Q:今後のラインナップについて教えてください

ワイヤーワークスは大衆的なウイスキーというよりも、コアなファンに楽しんでもらえるブランドへ育てたいと思っています。まずそのためには、安定して供給できる定番シリーズを3種類ほど。

それに加えて、毎年限定版や実験的な新製品を発売し、常に新しい体験を市場へ提供したいと考えています。品質を第一に考え、日本のように厳選した地域で、小規模でもプレミアムな製品を追求していきたいですね。

Q:日本市場に対する期待はいかがですか?

マックス氏: イギリスではウイスキーをストレートで楽しむ人が多いですが、日本ではハイボールで楽しむ方も多いようですね。一方で日本はウイスキーの知識が豊富な方も多いことから、イングリッシュウイスキーとの相性も良いのではないかと考えています。

私たち自身、多くの国々にワイヤーワークスを広げたいというよりも、コアなファンと成長していけるブランドを目指しているので、日本市場はとても楽しみにしています。

イギリスとは文化や好みも異なる側面もありますが、個人的に「ウイスキーの楽しみ方に決まりはない」というのが根本的な考え方です。ストレートや水割り、ソーダ割り、オン・ザ・ロック。飲み方はもとよりリラックスした環境で友人と、家族と、大切な人と、好きな飲み方を見つけて皆で楽しんでいただきたいですね。